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喜びはいじめを超える〜ホリスティック心理学からのアプローチ

2019年10月29日

毎回好評を得ている連続講座「多面的シュタイナー考察」。9月23日開催の10回目は、大阪府立大学 副学長の吉田敦彦教授をお招きしました。NPO法人京田辺シュタイナー学校顧問・高等部講師や学校法人シュタイナー学園高等部講師も務める吉田先生は、日本シュタイナー学校協会の専門会員でもあり、協会創設に素案作りから関わってこられました。
「喜びはいじめを超える〜ホリスティック心理学からのアプローチ」というタイトルに、関心を寄せる方も多く、当日はたくさんの方に参加いただきました。
「いじめは、なぜ生まれるのだろう。 大人の世界にも子どもの世界にも、私たちの周りからいじめが無くならない。今回の『大人のゼミ』では、意志と感情と思考、 自我と自己(セルフ)、意識と無意識のつながりを全人的に捉えるホリスティックな心理学から学んでみたい。 心の底からわきあがる深い喜びとともにある教育とはどんなものか。私たち一人一人が自分の内面を見つめ、子どもと教育について考える時、『いじめを問題にしてそれを排除するのではなく、喜びを創り出すことこそがいじめの問題解決の出発点となる』という事に気づいていくことになるだろう。」
こうして大人の“ゼミ”が開講しました。参加した保護者の感想です。



今回の大人のゼミのタイトル、「喜びはいじめを超える」というタイトルを見て、いじめという言葉にひかれるように講座受講を決めました。関東圏のベットタウンの公立学校で育った自分にとって、いじめは遠い世界のことではなくいくつかの苦しい思い出とともに比較的身近にあることでした。子どもが学齢期を迎えたからか、自分自身も自分のこれからの道を考えたり過去を振り返ってみる時期にきているのか、「いじめ」というテーマについて自分の中でゆっくり振り返りたい、という思いが少し前から自分の中にありました。と言いつつ、日々の生活で手一杯でそんな時間は全く取れなかった私にとって、まさに今だ、という感じで巡ってきたチャンスでした。
大人のゼミ当日、いつも通り、包まれるような暖かい色調の十日市場校舎のオイリュトミー室に入ると、そこはまさしく「ゼミ」。黒板が用意されていて、椅子に座り、ノートを手に90分の講義(その後30分の質疑応答)に臨みます。
「いじめ」を含むテーマで重たい雰囲気になるかと思いきや、講義は講師である吉田教授が20代半ばに最初の職業として選んだメキシコでの日本語および日本文化の教師として体験した経験から始まりました。1980年代のメキシコの学校ののびのびと自由な雰囲気が伝わってくるエピソードにぐいぐい引き込まれます。中高生になってもとても天真爛漫な子供たち。授業の時間になっても校庭でバレーボールに熱中し、吉田先生が探しに行くと戻るどころか審判を頼まれたそうです。そして、バレーボールがひと段落すると教室に戻りしっかり日本語の授業を受けたということ。その一件を教頭先生に相談しても問題は何もないと言われたそうです。まさに「今」を生きていて、何かをしたい、という自分の意思、思いに正直な子供たちの間では、「いじめ」という概念そのものがなかったそうです。そして、授業の中で吉田先生が当時の日本で問題になっていたいじめに起因する自殺のニュースをシェアした際には「もっと楽しいことをしたらよいのに」という感想がでてきたそうです。
「今したいことをする」のが当たり前の環境ではいじめがない、指示や規範・ルール、時間割、他人・世間の目など様々なコントロールがある社会でいじめが起きるという構造を心の中を卵型に見立て、ホリスティック心理学のアプローチから解説してくださいます。

残念ながらその中身を要約してお伝えする筆を持ちませんが、赤ちゃんのように生き生きとやりたい事をやるエネルギーと、指示や規範などのコントロールが心の真ん中のフィルターのところでせめぎ合っており、やり遂げられなかった意思がフィルターの所にたくさん滞まりくすぶると、それを実際にやっている誰かを見つけた時に、くすぶりがその誰かへの攻撃として現れることでいじめが起きると理解しました。
自分の心の奥底から湧き出るやりたいと言う気持ちがちゃんと叶えられているとくすぶりはあまり溜まりません。
そこで、メキシコの学生が言った「もっと楽しい事をしたらよいのに」と言うコメントに戻り、彼らは時間割や指示などに縛られることが少なく、自分たちの心から湧いてくるものを実行にうつせているから、いじめがなかったのかーといじめのメカニズムが腑に落ちてわかりました。
シュタイナー教育では意思を大切にします。こどものやりたい!に応えることは親としては大変な時もあり、1年生と1歳児のいる我が家は毎日朝から晩までこどものやりたいが途切れる事なく親としては大変な時もありますが、やりたい気持ちを大事にすることで、豊かな人生につながるのだなーと思うと毎日を頑張る元気が湧いてきました。
卵に見立てた心の中の話は、意識と無意識、さらに無意識が個人的無意識、普遍的無意識とわかれ、喜びがどのレベルでおきている喜びか、他人の喜びが自分の喜びと言う感覚、などさらに広がって行きます。こちらは自分自身の心やこれからの人生を考える上でヒントを与えてくれました。中身をうまく伝えられないのがもどかしいですが、また吉田教授が来てくださった時にはぜひ受講をオススメします、と言う事で筆をおきたいと思います。
(1年保護者 永野康子)