第11話 世界がもし100人の村だったら=特別授業

2018年04月15日

「今からランダムに配られる、運命の〝なりきりカード〟をもらってください。で、一斉にその国の人に成り切ってください。おぎゃーという感じで。いいかな」

著者に配られたカードにはこう書いてあった。名前はドリル。大人でアジアに住み、ペルシャ語を話す。あいさつは「サラーム(こんにちは)」。そして最後に□のマーク。

3月上旬、横浜シュタイナー学園十日市場校舎の大教室。輪になった7、8年生と教員、保護者ら33人に、トレーニングウエア姿の韓朱仙(ハン・チュソン)先生が呼びかける。韓先生の特別授業「世界がもし100人の村だったら」が始まった。

■世界を一望

「世界がもし…」は、「9.11」、2001年の米同時多発テロ事件後、作者不明のままインターネットで拡散した英語の詩だ。各国語に翻訳され、日本ではNPO法人・開発教育協会が、世界約76億の人口を100人くらいの村に縮小して考えてみる、国際理解のためのワークショップ用教材を開発した。学園で普段5年生以上の体育を教える韓先生は、同協会の理事を務めていたことがあり、教材を改良し、8年生の世界地理のまとめとして授業を受け持っている。8年生12人だけでは多様性に欠けるため、7年生と教員、保護者らも加わった。

韓先生の100人村のワークショップは、16年8月に学園で開催された第2回ユネスコスクール神奈川県大会でも行われ、これをきっかけに同じユネスコスクール仲間の多摩市立第一小学校(東京都多摩市)の5年生、ユネスコ・アジア文化センター主催のSDGs(持続可能な開発目標)こどもワークショップなどでも行われた。

韓先生の授業に戻ろう。
「この村にはどれくらい大人がいて、お年寄りがいて、子どもがいるか調べてみたいと思います。実際に動いて確認してみましょう。子どもは小っちゃくなって、大人は真っすぐ伸びて、お年寄りは中腰かな」

配られたカードの情報を元に3カ所に集まると、一番多いのは大人で、全体の6割を占めた。
「ってことは、大人が変われば、この世界は変わるかな。大人から変えていかなきゃね。日本ではもっとお年寄りが多いイメージがあるよね。平均寿命は80歳を超えてる。でも、シエラレオネなどアフリカの国では平均寿命が40歳代の国がまだまだあります。私くらいの人がその国の天に召されていく年齢ということ。ちょっと想像できないくらい寿命に差があります。平均年齢というのもあって、カンボジアの平均年齢って分かる?20歳代だって。悲しい昔の内戦のせいです。じゃあ、日本はなぜ寿命が長いんだろう?」

授業はこんな具合に、なりきりカードに沿って、各大陸の人口、言語別使用人口へと進む。例えば世界が今回のワークと同じ33人だとすると、世界人口の0.5%にも満たないオセアニアの人口はゼロに近くなる。実感が伴わない億単位の数字を見える化し、体感することで、世界の様子を一望できる仕組みだ。

「仲間探し」のワークでは、自分が使う言語のあいさつを口々に発しながら、教室中を歩き回り、同じ言語を使う人を見付ける。世界には3000以上の言語があるとされ、33人中13人が仲間を見付けられなかった。「こんにちは」も「アンニョンハセヨ(韓国語)」も「ジャンボ(スワヒリ語)」も1人だけ。韓先生が尋ねた。
「多様な言葉がこの村にはあるけど、仲間を探せなかった人はどうする?」

生徒たちは「孤独に感じる」「言葉が通じないから不安」

■貧富の差を体験

最後のワークは、著者の場合□マークだった謎のグループ分けだ。他の人のカードには、■◇☆○のマークが書かれている。
「どういう共通点で集まっているか考えてみてください。宗教かもしれない。突拍子のないことを考えてもらっても面白い」
「国旗に☆がある」「地域の名前が『あ』から始まる」などの意見が出されたが、外れである。
「種明かしです。貧富の差で5グループに分けました。お金持ちの人、貧しい人です。私は今日30枚のおせんべいを用意しました。皆に均等に大体1枚ずつ配れる数なんですけど、このグループの現状に合わせて配りたいと思います」

結果は、最も富裕なグループから■7人が23枚、◇6人が4枚、☆6人が1.5枚、○7人が1枚、□7人が0.5枚。4グループは1人1枚も得られなかったのに対し、富裕層グループは1人3枚配ってもまだ余る状況だ。