今年はシュタイナー学校創立100周年

2019年05月14日

1919年9月のことです。ドイツ、シュトゥットガルトにあったたばこ工場の建物で、ひとつの学校が誕生しました。当時、軍事力を使ってヨーロッパに君臨しようとしたドイツの夢は、第一次世界対戦で敗れたことで打ち砕かれ、国中が意気消沈していました。
「これからの社会を創るのは、軍事力ではない。人間そのものだ。我々は、人間の本質に合った教育方法で未来の社会を創造する力を持った子どもたちを育てるべきだ。」暗い闇夜にろうそくの火を灯すようなこの言葉でルドルフ・シュタイナ-は賛同者を集め、世界最初のシュタイナー学校「自由ヴァルドルフ(シュタイナー)学校」が始まりました。
ドイツでは伝統的な徒弟制度が根強く残っていた為、当時は男女がひとつの教室で学ぶことや、職業の違う家庭の子どもたちが同じ学校に通うこと自体が珍しかったようです。しかし、見た目にも画期的だったこの学校の本当の革新的な部分は、その教育理念にありました。それは、人間の本質を見抜き、本質に合った教育を施すことです。「人間の成長、発達には普遍的な順序と適切な期間がある」と説いたシュタイナーの人間観に基づいた教育方法は、ドイツのみならず世界中の子どもたちに通用しました。また、根本的な理念を押さえた上で、それぞれの国の文化に沿ったカリキュラムを創造することが可能でした。それがこの100年間でシュタイナー学校が広がり、今や世界各地に1000校以上が存在している理由だと思います。

シュタイナー学校創立100周年を記念したさまざまな動きがあります。世界中のシュタイナー学校が手を繋ぐプロジェクト(全世界葉書交換プロジェクトは今も進行中)や日本中の学校が協力して行うプロジェクト(8月16日~18日の渋谷でのイベントを中心に数々あります)のほか、個人的に世界各国のシュタイナー学校を訪問することに挑戦している人たちもいますから、今年は海外からの訪問客が増えるかもしれません。

横浜シュタイナー学園では、12名の教員が「最初のシュタイナー学校」で9月に開催される世界的な教員会議に参加する予定です。10月には報告会を開き、学びを分かち合いたいと思います。  
学内ではこの機会にシュタイナー教育に対する思いや考えを深めていこう、と保護者の有志の皆さんがプロジェクトを立ち上げ、さまざまなイベントが計画されています。
100年前にシュタイナー学校が創立された理由をそのまま現代や未来への課題に当てはめることはできないでしょう。しかし、今、人間存在に危機が訪れているという意味では、100年前の世界と似ているのではないでしょうか。機械化、合理化が著しく進み、「AIが人間を超えた」などと言われる時代であるからこそ、人間とは何かを問い直し、人が人を育てることの意味を考える必要があるのではないでしょうか。

2019年は、これまで100年続いてきたシュタイナー教育の歩みを振り返るだけではなく、次の100年に向けて人間存在の本質を見つめ、変貌しつつ歩んでいく可能性を探る年にしたいと思います。

サポート教員(美術史・美術・古典担当) 長井麻美


2019年6月23日、7月21日開催
なぜ、今、シュタイナー教育なのか ~100周年記念対談シリーズ~

2019年8月16日〜18日開催
企画展「世界がかわる学び ~シュタイナー教育100周年~」in 渋谷