9年生英語劇「The Seven Ravens and The Fantastical Tale of Finn MacCoul」を観て
近頃の私は涙腺が緩み気味だ。卒業までのカウントダウンが始まったようで、子供たちの発表がある度にこれまでの想い出が重なるのだ。案の定英語劇では、最初に舞台袖から聞こえてくる歌を聞いただけで熱いものがこみ上げてきた。
今回の英語劇は1年生の時から学んでいる英語の集大成である。演目が決まってから浜本先生はまず子供たちを都内にある「巨人のシチューハウス」というレストランに連れて行ってくれた。店主でアイルランド人のアランは身長2メートル(巨人の中では小柄な方らしい)、休日の日にわざわざ店を開けて子供たちを迎えてくれた。アイルランドでの勇敢な巨人戦士団フィーナのリーダー、フィンマクールにシチューをふるまっていたというアランの大きな手で作られた料理はどれも格別な味だったようだ。アイルランド民謡や楽器演奏も披露してくれたアランに子供たちも歌のプレゼントをしたということだ。
レストランでの食事が美味しく、楽しかったことは娘からも十分伝わってきたのだが、一向に家で練習している気配がない。予定を見れば漢字検定、例年より1か月遅い農業実習、卒プロの準備に、音楽の発表と9年生の2学期は本当に忙しい。農業実習から戻った翌週はエポックを英語劇に代えて集中稽古をしたが十分な時間が取れたわけではなかった。
さて当日、初めの「The Seven Ravens 」では7羽のカラスが重いからだ体を引きずるようにして飛び立っていった。いかにも思春期男子と苦笑する。7人の兄さんの食べ物をおいしそうに食べる妹役は食いしん坊のあの子にぴったりの役だった。2つ目の劇が始まるまで浜本先生も加わったバナナトリオの笛の演奏があった。その間に次々と舞台セットが用意されていく。2つ目の劇「The Fantastical Tale of Finn MacCoul」ではベナンドナーとフィンマクールの掛け合いがとても自然だった。かれらのユーモアのセンスに依るところが大きかったかもしれない。
英語についてはまだまだ練習が必要かもしれない。しかし全員は観客に伝える術が言葉だけではないことを熟知していた。その上一人一人の演技にゆとりや柔らかさを感じた。それは既に8年生劇という大きな舞台を経験したことからくる自信かもしれない。でもそれ以上に農業実習の2週間、共に働き生活をしたことで、12人が1つになれたこと、互いに相手の自我を尊重し信頼できるようになったことにあるのではないかと感じた。表に出ているときもそうでないときも、互いに補い合えることを知っている安心感で満たされていたのだと思う。
とはいえ卒業まであと何か月、なんて感傷に耽っているのは親だけかもしれない。子供たちの目は常に未来に開かれている。
最後に、短い期間で演出から小道具作り、選曲に演奏、そして英語の発音まで広範囲に及ぶ準備と指導をしてくださった浜本先生とご観覧くださった皆様に心より感謝申し上げます。
そして9年生よ、ありがとう。
(9年生保護者 石田のぞみ)