第2校舎として、十日市場の賃貸ビル2階を借りました。
2011年4月の開校を目指して、スケルトン状態で借りたコンクリートのフロアに4つの教室とオイリュトミー室のある校舎をつくります。
物件の決定を受けてすぐに内装工事設計の建築会議(バウクライス)が重ねられました。
設計は開校時、霧が丘校舎の内装でもお世話になった村山建築設計事務所に依頼しました。
少ない予算の中、子供の過ごす場所として最善を尽くして設計されました。
2010年11月14日、工事着工に先駆けて「十日市場校舎 始まりの祝い」を行い、教員・保護者で新たな校舎の誕生を祝いました。
隅田先生・猿谷先生(ともにオイリュトミー専科教員)によるオイリュトミー“ハレルヤ”で空気が清められました。
内装工事は(株)トレカーサ工事さんに依頼することになりました。学園の少ない予算提示にも、非常に良心的な価格で快く引き受けていただきました。
いよいよ着工です。
コンクリートむき出しの空間から、大工さんたちの手により無機質から有機的な空間へと。
日に日に木の香りが広がっていきます。
年が明けて1月16日から教員・保護者を中心としたボランティアによる工事が始まりました。
4月2日までの間に32回(のべ32日)、教員・保護者・児童生徒・学園外からのご協力者の方々のべ457名(平均14,5名)の参加によって進められました。
そして、工事参加者だけでなく、炊き出しや差し入れをしてくれた方、保育をしてくれた方、ご寄付いただいた方などなど、さらにたくさんの人々の力に支えられて校舎の完成に至ることができました。
ボランティアの手によってどのような工事が行われたか、以下にご紹介します。
照明器具台座作りには、たくさんの子供たちが関わりました。面取り作業は授業の木工で切り出しナイフを使っている5~7年生が、やすりがけは低学年児童が丁寧に仕上げました。週末には親子並んで作業するほほえましい姿がいくつも見られました。
男子トイレのタイルは、ひとつひとつ割ったものを手作業で磨き、それをまたひとつひとつ色と形を合わせながら貼っていきます。まだ寒い時期から地道な作業でした。
水場づくりはボランティア工事の中でもかなり大きな比重を占める作業となりました。
独特なデザインを実現するため、村山建築設計事務所でも初めてという実験的な工法が考案されました。
スタイロフォームで土台となる形をつくり、表面にFRPを塗って補強した上に、全面にタイルを貼り詰めるという一連の作業は、素人の集まりである保護者たちにとって困難を極めましたが、試行錯誤の末、ついに世界に一つしかない素敵な水場が完成しました。
スタイロフォームの土台にガラス繊維のシートを貼り、ポリエステル樹脂に硬化剤と促進剤を混ぜたものを塗っていきます。一定時間で固まり、強度の高いプラスチックとなります。
……ところが、溶剤の配分を間違えたため、一日経っても全く固まらず。すべて剥がしてやり直しすることになりました。
丈夫な水場の土台が完成しました。
水場のタイルは、小さく丸いタイルを広い場所はシートで、複雑な部分はひとつひとつ隙間を調整しながら貼っていきます。このタイル貼りには延べ100人の手が掛かっており、水場のあちこちをよく見ると貼り方に個性が表れています。
完成!
霧が丘校舎の開校以来、毎年のように行われてきた壁紙貼りと天井・壁の色塗りは、横浜シュタイナー学園のお家芸(?)。
しかし、十日市場校舎の壁はあまりにも広く、複雑なかたちが多いため、一筋縄では行きません。
この作業期間中に東日本大震災が起こり、工事の継続が危ぶまれました。しかし、あきらめずできることを少しでも進めようということで有志が集まり、この後も工事を続けることができました。
横浜シュタイナー学園では、子どもたちも授業で使っているシュトックマーの水彩絵の具で塗っています。
玄関も独特のデザインで、水場と並んで難易度の高い作業となりました。
4月1日、ついに十日市場校舎が完成しました。
新学期からの学園生活に胸を膨らませるこどもたちのために、このボランティア工事を無事終えることができました。
新校舎に思いを寄せ、ご支援くださったたくさんの方々のおかげです。ありがとうございました。
新校舎開校を祝う会は、東日本大震災の影響下ということもあり、プログラムを若干変更し、見守る会として行いました。お客様22名と保護者・教員で約65名の参加がありました。