Q:シュタイナー学校では「自由への教育」を目指しているといわれますが、それはどういうことでしょうか?
Q:子どもたちにルドルフ・シュタイナーの世界観を教えるのですか?
Q:メディアには触れさせないと聞きましたが、具体的にはどのようなことですか?
Q:シュタイナー学校では、「自由への教育」を目指しているといわれますが、それはどういうことでしょうか?
A:そもそも「自由」とは何でしょうか?
自分の欲求に従って好き勝手に生きることが本当の「自由」でしょうか?シュタイナー教育では、そうではなく「自由」を「その人が為すべき使命を、必要な時に、適切に成し遂げられること」と捉えています。そのような「自由」を実践する力は、成長の過程で少しずつ得られるものです。低学年の子どもたちはまず、教師や親など、大人の態度から多くの事がらを学ぶ必要があります。そこにはいわゆる「好き勝手な自由」はありません。
こうして、大人になった時に本当の「自由」を手にできるようにするのが「自由への教育」であり、シュタイナー教育のモットーなのです。
Q:「エポック授業」とは何ですか?
A:毎朝100分間、3〜4週間にわたってひとつの教科を集中的に学ぶ授業スタイルを「エポック授業」と呼んでいます。細切れでない集中した学びが得られるとともに、学び終えた教科はいったん忘れることで学習内容はしっかり消化され、より深い理解へと変化していきます。
一方、外国語、音楽、オイリュトミー、手仕事などの専科授業は、エポック授業の後、リズムをもって、決まった曜日に行なわれます。
Q:「オイリュトミー」とは何ですか?
A:「オイリュトミー」は言葉と音楽を、法則のある空間、形の中で身振りをもって表現する動きの芸術です。一人で、もしくはグループで作品を創り上げることは、洗練された空間感覚を鍛え、社会性を学ぶことを促進します。ひとつひとつの言葉や音楽の要素は自分自身の身体を通して表現されます。それによって生き生きとした注意力、創造性、心のこもった意識的な動きをする力が修練されます。
Q:体育の授業ではどのようなことをしますか?
A:シュタイナー教育では、将来目指す「自由な人間」とは、心身の成長段階に適した様々な体験を通して自分の身体を必要な時に適切に使いこなせるようになった人だと考えています。体育の授業で目指すのは、運動体験の質を高めることであり、競争意識に縛られず、心身共に健康を保つことです。
そのような観点から、体育の授業では心身の成長段階に適した課題に取り組み、友達と協力しながら体を動かす楽しさをそれぞれの学年にふさわしい方法で味わえるようにしています。
Q:点数による評価や評定はまったく行わないのでしょうか?
A:行いません。
学年末には、それぞれの成果と課題が表現された文章と詩による通信簿が一人ひとりの子どもに贈られます。
よい「点数」を取るためではなく、学ぶ喜びや発見の驚きが、子どもたちの心身を健やかに育てると考えるからです。年齢に即し、成長発達段階に合ったテーマを与え、芸術的な方法を通して学ぶときに、子どもの内面から学ぶ意欲が生まれます。
Q:子どもたちにルドルフ・シュタイナーの世界観を教えるのですか?
A:ルドルフ・シュタイナーの世界観、人間観はシュタイナー教育の基礎となっていますが、子どもたちにそのような世界観を直接教えることはありません。
Q:担任教師が全ての教科を教えるのですか?
A:担任教師は主に「エポック授業」を受け持ち、専科の授業は各科目の教師が担当します。担任教師は多くの教科を準備し、研究を深め、学んでいく姿勢を常に持っています。また、必要に応じて同僚の教師たちと特定の科目については共同に研究を行い、どの教科でも充実した授業を行えるように努力しています。
Q:メディアには触れさせないと聞きましたが、具体的にはどのようなことですか?
A:メディア、と言っても解釈はさまざまであり、手書きの文章もある意味ではメディアと言えます。シュタイナー教育では、「しかるべき時期に、しかるべき内容を芸術的な方法で教えること」を大切にしており、段階を追ってゆっくりと、いわゆる「デジタルメディア」と子どもを出合わせるように配慮しています。
デジタル化した情報が幼い子どもの脳や身体の成長に悪影響を与えることは科学的にも指摘されています。バーチャルな体験は子どもたちの体と心の育成の栄養にはならず、ゆっくり育むべき情操や思考力をいわば「早産」させてしまう危険性があります。
0歳から7歳まで、また7歳から14歳まで、子どもたちは身の回りの事象に向かい、手で触れ、実際に見、においや味を感じることで、自らの感覚器官を研ぎ澄ませていきます。健全な肉体を持ち、温かな感情を育んだ後、高等部(9年生以降)になって初めてデジタル機器の扱いや情報についての考え方に触れます。このように、シュタイナー学校では「機械に使われる人間ではなく、機械を使いこなす温かな血の通った人間」を育成するために、デジタルメディアとのかかわりにとても慎重な態度を取っています。
Q:授業でICT機器を使いますか?
A:本学園で授業に用いる道具は、子どもたちがその仕組みを理解できる段階になってから導入しています。ICT機器については特に、判断力や思考が自立する15歳頃を目安としています。本学園では9年生で、コンピューターやネットワークの原理およびリテラシーについて学びます。コンピューターの歴史をひもとき、論理回路を実験を通して学び、電磁スイッチを組み合わせて、メモリー回路、クロック回路、加算機、通信装置など、コンピューターを構成する主要な装置を実際に作ることで、体験と結びついた理解へと導いています。
Q:9年間、温かく小さな社会で育った子どもたちが、現実の社会生活に適応できるでしょうか?
A:シュタイナー教育では、子ども時代に豊かで細やかな感情を育てます。また、自らの身体を動かし、感じ、考えるプロセスを通し、なすべきことを自発的に実践していくことを身につけます。世界を肯定的に受け止める姿勢は、後に責任をもって社会を担っていく力となります。世界的な規模でシュタイナー学校卒業生に関する追跡調査がなされています。その結果、卒業生たちには大学において積極的に学ぶ姿勢が顕著に見られました。また、社会人となってからは多様な職業に就き、それぞれの分野で高い評価を受けている、との報告があります。
Q:低学年のうちは習いごとはさせないと聞きましたが、どのような理由があるのでしょうか?
A:学校に通い始めた7歳の子どもたちは、それまでと全く違う学びを体験します。短い授業時間であっても、そのために子どもが費やすエネルギーは大変なもので、子どもたちはそれだけでもへとへとになるはずです。子どもたちは学んだことを消化するために十分な休養を必要としているので、学校での学びや体験を大切にするために、シュタイナー学校では低学年の内に「習いごと」はさせず、帰宅したらゆっくりと就寝までの時間を過ごし、早めに寝かせるようにお願いしています。また、少しずつ子どもが自立して、時間の使い方が分かるようになってくる4年生ごろからは、毎日の定期的な練習を必要とする楽器を習い始めることを勧めています。この時、音楽専科教員と担任教員、保護者とが相談して、その子どもに一番ふさわしい楽器を選び、習い始めるようにしています。
Q:子どもたちが自然に触れる機会や場所はありますか?
A:港町/横浜のイメージからは思い浮かばないほど、学園の周辺はのどかで豊かな緑があふれています。子どもたちが走り、転げまわることのできる緑の木々に囲まれた公園は遊歩道に繋がれて点在しており、学園生活において、授業でも学童でも頻繁に利用しています。
さらに、子どもの足で20分ほど歩いたところには、豊かな里山の自然をそのままに残した「新治市民の森」が広がっています。学園の子どもたちは、広大な敷地を持つこの森で、自然観察や野外学習など四季を通じて豊かな学びを体験します。
Q:子どもたちの学籍はどうなりますか?
A:当学園は、法令の定める学校ではないので、学籍を置くことはできません。法令に従い、子どもの学籍は地域の公立校に置かれます。保護者は各自該当校に出向き、立場を説明する必要があります。地域の公立校への連絡や、学籍に関する諸手続きについては、活動グループ「子どもの教育権を考える会」が相談に応じています。
Q:9年制ということですが、中学卒業資格を認められますか?
A:当学園は現時点では公式の卒業証書を発行する資格を持ちません。そのため、学籍校から卒業証書を発行してもらうことになります。これまで希望したにもかかわらず発行されなかった例はありません。
Q:高等部(10年生〜12年生)を作る計画はありますか?
A:今のところ高等部を開設する予定はありません。高校進学については、他のシュタイナー学校高等部とも連携をとっています。
Q:教育上特別な支援を必要とする児童の受け入れは可能でしょうか?
A:当学園は、現在、そのような体制を持っていません。補助なしで一斉授業を受けられることを受け入れの基準としています。
Q:子どもたちは放課後は、どのように過ごしていますか?
A:低学年の希望者は放課後に学校に残り「ペレの家」という学童保育で過ごしています。中学年になると、楽器の習い事がある子どもが増えてきて、帰宅して自分の裁量で毎日の練習に時間を費やしているようです。
高学年(この学園では7〜9年生の中等部生)になると、放課後に部活動に入り夕方まで活動してから帰宅する生徒が多くいます。そのほかは帰宅して、楽器の練習や趣味、宿題や勉強の時間に充てているようです。
Q:学童保育はありますか?
A:「ペレの家」という放課後と長期休み中の子どもたちの居場所を、学園の事業として運営しています。
Q:給食はありますか?
A:ありません。お弁当、水筒持参となります。
Q:健康診断はありますか?
A:一年に一回、一学期に内科、歯科、耳鼻咽喉科の校医による健診があります。そのほか、検尿、視力検査や身体測定を行っています。
Q:授業参観はありますか?
A:教室が狭いため、いわゆる「授業参観日」と称して全家庭保護者が一堂に会して参観することは難しいです。専科によっては広い教室で、全保護者に参観していただく機会を設けています。低学年では個別に1家庭ずつ参観していただく日を設けているクラスもあります。
Q:保護者は学園とどのように関わっていくのでしょうか?
A:保護者は、学園運営や日々の教育を支える活動に関わっていきます。教員と保護者が共に働くことによって生まれる信頼関係の中で、子どもたちは安心して学校生活を送ることができます。また、保護者の無償の活動により、学園の経済は支えられています。シュタイナー教育をより深く理解するための勉強会に積極的に参加することも大切だと考えています。
Q:親がシュタイナー教育について学べる機会はありますか?
A:年間を通して、教員会主催の講習会や勉強会主催の講座、有志で行われている読書会など、自己の学びとなる様々な機会があります。