5月4日、政府は、全都道府県に出していた緊急事態宣言を5月31日まで延長する決定を行いました。新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しない中、学園は、公共交通機関を使って通学する児童生徒が多いことなどを考慮し、5月29日(金)までの休校の延長を決めました。
「早く学校に行きたい!」という子どもたちの気持ちは重々承知した上で、命を守るための苦渋の選択でした。
各家庭で過ごす新学期のスタートとなりましたが、教員たちは保護者とも連絡を密に取り、各クラスの事情に合わせて家庭学習ができるよう工夫をしています。
今回は、3年生保護者が、“お家の学校”の様子をレポートしてくれました。
新学期が始まって早3週間。毎日の学習リズムにも慣れてきました。
今回は休校中の家庭学習の様子を書いてみたいと思います。
3年生は新学期最初の週の始めに、担任の末永先生から家庭学習用の教材を送ってもらいました。先生のお話では、月~金、9時~12時は学校と同じ学びの時間として過ごしてくださいとのこと。内容は、朝の会、リズム、エポック学習、そして練習の時間。学校での授業の流れと同じ、つまり、保護者が担任代行をするということ…。
正直に申しますと私には2つ難点がありました。
普段子どもが学校にいる時間に働いているため、どうしたものかと悩みました。また、生のエポック授業を見たのは昨年度のお誕生日授業参観の1度だけ。朝の会やリズムと言われても、言葉も動きも覚えているはずもありません。そんな保護者がどうやってエポック授業を家庭で実現するのでしょう…。
先行きの見えない社会情勢に気持ちが動揺していたところに、さらに心配事が増える思いでしたが、送られてきた袋を開けみて、そんな不安は一気にどこかへ吹き飛んでしまいました!
中に入っていたのは、保護者向けにお手紙と、1日ごとに子どもに渡す教材や色鉛筆(2年生では2色しか使っておらず、これから1色ずつ増えていくのです)、子ども用には家庭学習用のワークブックと、新色の色鉛筆1本が入った色鉛筆ケース(本人が手仕事で作成、家こびとさん仕上げ後の初使用!)、仕掛かりの手仕事作品入り手仕事袋、漢字用の新しいノート、みつろう粘土。ワークブックには鮮やかな水彩作品が表紙に付けられています。
これを見て子どもも大興奮!早く見たい早くやろうと大騒ぎになりましたが、受け取りが夜だったので、明日のお楽しみに。
夜のうちに予習せねばと内容を確認。進め方を書いてくださっていたので私にもできそうな気がしてきました。仕事は午後にずらす交渉を決意して、午前の時間を確保することにしました。
翌朝いよいよ学習開始です。まず朝の会から。朝の歌、空間を感じる動き、ごあいさつ、朝の詩。言葉や詩は書いてありますが、動きやメロディは全部子どもに教えてもらいます。
初日は朝の歌のメロディが出てきませんでしたが、翌日先生がお電話くださったときに聞いてみると、「長いお休みだったので奥の方にしまわれているんですね。だんだん思い出しますよ」とのこと。確かにその翌日には難なくするっと出てきました。意識していなくてもちゃんとしまわれているんですね。
続いてリズムの時間。「きつねが一匹歩いてた」は2月までしていた冬バージョンを春バージョンの詩に替えて動きます。リズムに合わせて手足を叩いたり、体をひねって肘と膝を合わせたりする動きは、眠っている身体と頭を目覚めさせ、学びのための準備が整っていくようです。
引き続き、手足でリズムを取りながら九九の暗唱、ボールを投げ渡ししながらの暗算。こうしたことも身体を動かしながらリズムよく行います。
そしてお待ちかねのエポック学習。
ワークブックの中はクレヨンや色鉛筆で鮮やかに描かれ、中表紙には子どもの名前が。毎日日付が書いてあるので、翌日の分が見えないようクリップで留めておきました。
「きょう学ぶこと」を一緒に音読して、何をするかを確認します。読み書きの順序は、書く→自分で書いたものを読み、耳で聞いて味わう→活字を読む、なのだそうで、3年生は課題を音読することも学びの一環です。
この週は、2年生の最後に予定されていた聖人伝で、前日のお話を思い出し、音読し、漢字を学び、お話の続きを聞く、という流れで進んでいきました。
学習の終わりにも言葉を唱え、ありがとうのごあいさつでエポック学習を締めくくります。
一息ついてから(と言っても本人は早く次をやりたくて続けてしまうのですが)、練習の時間に入ります。
この週のテーマは手仕事。みつろう粘土で鳥の巣と雛を作ったり、卵の殻で飾りを作ったり。3日目4日目は休校前の手仕事授業の続きで棒針編み。私には教えられないので大丈夫かしらと思っていたら、手仕事専科の野村先生から直筆のお手紙が。本人が分かる絵と言葉で書かれており、編み方もちゃんと覚えていて、難なく進めていました。
毎日日記を書き、週の終わりに今週のお手伝いも書いたら、お家からのコメントを書いて返送。週末にまた翌週の教材を送ってくださいます。
シュタイナー学校では教科書を使いませんから、学習内容が文字で書かれていること自体、異例のことではないでしょうか。それでも今の状況下で学園らしく学びを続けられるようにと、これだけの内容を(それも無駄がなく、毎日楽しめる内容を)考え、工夫し、準備をしてくださり、先生方には本当に感謝しています。
子ども自身が喜んで積極的に取り組んでいることもありがたいですが、毎日の学習の流れを私も一緒に体験することで、毎日決まった時間に決まったことをする、あらゆる意味でのリズムをとても大切にするこの教育によって、私自身も気持ちが晴れて救われている気がします。
今月も休校が続くのは残念ですが、今度はどんな課題だろう、と子ども以上に楽しみにしております。
(3年生保護者 本橋麻衣子)