6年生は、7月7日に長野県川上村にある甲武信(こぶし)鉱山貯鉱場跡へ鉱物採集に出かけました。これは、鉱物学を学んだ後に、子どもたちが、実際に自分で鉱物を探す体験をし、湯沼鉱泉の水晶洞に数多く展示されている様々な鉱物を見学し、学びを深めるための課外授業です。
初めて鉱物採集の話をした時、子どもたちは、「バスで行きますか。」と質問してきました。「バスで行きますよ。」と話すと、「よかった。」と多くの子どもが思ったようでした。それは、5年生の時のバス旅行がとても楽しくて、またそんな機会が持てると思ったのでしょう。何日も前から、「まだかな。」「早く来ないかな。」と言って、待ち遠しくてたまらない子どももいました。
課外授業では、いつもお天気のことが気がかりです。現地の様子は、ミネラルハンターの中川さんが確認してくださり、予定通りに出かけることができました。中川さんは、鉱物採集の時にはいつも私たちを指導してくださり、1期生の時からお世話になっている方です。
早朝、みんな元気にバスに乗り込み出発しました。席には余裕があったので補助席を出す必要もなかったのですが、子どもたちは補助席を出してみんなでかたまって座り、何やら楽しそうでした。それから、途中で、中川さんと合流し、JRの駅の中で、標高が最も高い野辺山に行きました。ここで一休みし、写真を撮って、ようやく目的地に着きました。
甲武信鉱山貯鉱場跡は、昔、近くの山から鉱物を掘り出して、それを一旦ここに集めて選別し、要らないものは残していった場所です。今はもう使われていませんが、掘ると水晶、方解石、ザクロ石などがたくさん出てきます。子どもたちは、中川さんからパンニングのやり方、ハンマーの使い方などを教えていただき、「砂金が出るかもしれないよ。」と言われて、意気込んで掘り始めました。パンニングとは、パンニング皿に石や土と水を入れて回し、比重の大きい鉱物をより分けることです。こうやって小さな砂金を見つけることもできるのです。子どもたちも、お皿に残った鉱物をみて「これは○○石ですか。」などと尋ねていました。
さすがに中川さんはすぐに、「これは○○石だね。」と答えてくださいましたが、素人が石を正確に判別するのは本当に難しいと思いました。似ているけれど、よくみれば、1つ1つが異なって同じものが一つとしてありません。火成岩、堆積岩、深成岩、、石にもその成り立ち、いわば歴史があって、どこで生まれた石なのか、その土や成分の違いや古さが一つの石の模様や硬さを作り出しています。また、規則的な割れ方をする石もあり、私たちに幾何学的な美しさを現わしてくれます。自然には不思議な法則があるものだと思います。子どもたちも、それまで思っていた石に対する見る目が変わったと感想を言っていました。
みんな夢中になってパンニングを続け、おなかがすいているのにも気づかないのかなと思うほどでした。それから、清らかな水の流れの音を聞きながら、思い思いの場所でお昼を食べ、次の目的地水晶洞へと向かいました。
水晶洞では、ニホンオオカミの血をひくという川上犬が吠えながら私たちを出迎えてくれました。川上犬は長野県の天然記念物でとても貴重な犬とのこと。警戒心も強く、あまり近づくことはできませんでしたが、子どもたちはしばらく静かにじっと見ていました。
水晶洞のオーナーから、水晶洞を個人でつくった経緯などのお話を伺いましたが、方言たっぷりで、子どもたちにはよくわからなかったようでした。ただ、1億円借金したというところが、子どもたちに通じたのはおかしかったです。
この地域では、日本式双晶と呼ばれる、大変珍しい双子の水晶が見つかっています。また、水晶洞には海外の珍しい石もたくさん置かれていましたが、特に子どもたちの目を引いたのは、紫外線を当てると光る石でした。みんなその場からなかなか離れずに見ていました。
その後、中川さんからスイカをごちそうして頂き、本当に満足した体験でした。
シュタイナー学校では、子どもたちは3年生から、大地と人間との関わりを、田植え、畑、家を造って体験し、大地に生きる他の存在を、動物学や植物学を通して学んできました。そして6年生になると、大地そのものを鉱物学を通して学びます。固い土と岩石のかたまりと思っていた大地が、実は地球の中で動き、岩石は大地の中を循環したり、変化しながら何億年もこの地上に生きているのです。人間のような呼吸はしていないけれど、大地には、確かに静かな息づかいがあるのです。そんなことが、学びと体験を通して、子どもたちの中で生き生きと感じられていたらと思います。
(6年生担任 小林裕子)