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循環

2024年6月20日

横浜シュタイナー学園の周辺には
緑豊かな里山が広がっています。
タウンニュースやホームページにも掲載された
里山でのミニ演奏会のようすをお届けいたします。

 

『循環』

「この森で伐採された木材を使わせてもらい、
ヴァイオリンという楽器を創り、そしてこの森で演奏する。
これも1つの森の循環だと思います。」
と、風人くん。

5月26日(日)。新緑眩い季節。
学園からほど近い、新治市民の森の池ぶち広場には、
これから作業するために、
ヘルメットをかぶった作業着姿の
新治市民の森愛護会の人々が多く集っていた。
今日は月に数回ある愛護会活動日で、
朝の会が始まろうとしているところだった。

藤棚のある、少し高くなっているところに、
伊藤風人くんが立ち、
愛護会の野田重雄会長からご挨拶があった。

 

「伊藤風人くんは、横浜シュタイナー学園をこの3月に卒業し、
今は藤野にあるシュタイナー学園に通う高校1年生です。
彼はこの新治市民の森愛護会のメンバーでもあります。
卒業プロジェクトとして、
この森から切り出された木を使って、
ヴァイオリンを制作しました。
そして、今日はそのヴァイオリンで
ミニ演奏会をしてくれることになりました。
それではよろしくお願いします。」

会長からの紹介を受けて、
森でのミニ演奏会が始まった。
卒業プロジェクトで
ヴァイオリンを創ることになったいきさつ、
お世話になった方への感謝の思い、
この制作を通して感じたこと、など、
風人くんによる話があり、
いよいよ演奏が始まった。

今回は愛護会の方々への感謝を表すためのミニ演奏会であったため
学園で広く告知することはしなかったが、
話を聞きつけた学園の仲間たちも多く集まった。

聴衆が静まると、森に住む鳥たちの囀りが、一層森に響き渡った。
はじめに演奏されたのは、モンティ作曲のチャルダーシュ。
ヴァイオリン演奏曲としては有名ではあるが、
ピアノの伴奏も無く弾くのだという。
冒頭の抒情的な旋律に早くも彼の世界に惹き込まれていく。
森での音の響き方を少し心配していたけれど、
それは杞憂に終わり、
彼の言葉にある『循環』ということを自然に感じられるものだった。
そして、彼のヴァイオリンの音色に、
鳥たちが応えているかのように聞こえたのは私だけではなかったと思う。

 

2曲目は、映画「ニューシネマパラダイス」の曲として知られる「愛のテーマ」。
学園祭でも演奏したことのある思い出の曲を弾いてくれることを嬉しく思った。
そして、最後は、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番。
難曲を難曲に聴かせないのが彼の凄いところで、
陽の光を浴びたヴァイオリンが
最後に調弦が狂ってしまうハプニングはありながらも、
見事に弾ききった。

演奏を終えて数週間ほど経った風人くんに、
新治の森でヴァイオリンを弾いた感想を聞いた。

「これまでに森で弾いたことがなかったけれど、
弾いてみて思ったのは、
ヴァイオリンという楽器が生まれ故郷に戻った感じがする、
ということです。
ヴァイオリン本来の素の音に出会えた。
本当に貴重な経験をしたと思いました。」

彼の言葉を受け、今後も自然との繋がりの中で、
「循環」していく彼のような若い人たちが、
喜びを持って、平和に生きていける世の中を作っていきたい、
と切に願う。

音楽専科教員 伏見あかね

 

※ミニ演奏会の様子は、新治市民の森愛護会のホームページでも掲げられており、ヴァイオリン制作過程の苦労話や写真なども見ることができるので、ぜひご覧ください。

新治市民の森 愛護会
http://niiharu.la.coocan.jp/about/20240526-violin.html

●学園周辺ぐるっと探訪会 6/29(土) 8:40集合
https://yokohama-steiner.jp/event/cpt_event-20395/