林市長とのランチミーティング
林文子横浜市長と市民との昼食懇談会、ハヤシランチミーティングが8月17日、同市長室で開かれ、横浜シュタイナー学園の教員、運営委員、保護者ら8人が市長と約1時間、意見交換を行った。席上、林市長は学園の一部児童・生徒の学籍が認められていない問題について、市として協議に応じる考えを表明した。
▽エポックノートに感嘆
ハヤシランチミーティングは、市の公聴事業の一環として、公募・抽選で決定した団体・グループが林市長の名前にちなんで食事(ハヤシライス)を取りながら市長と意見交換を行う場。
昼食後の懇談会ではまず、市長にシュタイナー教育と学園の実情を把握してもらうため、学園側から運営委員の千原由美子さんが現在101人が通う小中一貫の全日制フリースクールであることなど学園の概要を説明。4年生担任の横山義宏先生からはシュタイナー教育の発祥や世界での広がりとともに、教科書を使わずエポックノートを用いた「イメージに訴えかける教育」内容を強調した。
続いて6・7年生担任の長井麻美先生と2年生担任の神田ひとみ先生が、子ども達のエポックノートや手仕事作品を見せながら実際の「イメージに訴えかける」授業内容を紹介した。
長井先生は、文字の学習について、公立の小学校では平仮名から導入するが、学園では視覚的にイメージに訴えるためエピソードを通して象形文字である漢字をまず教え、次に平仮名の学習に移行していくことなどを紹介。神田先生は「知的に働きかけるだけでなく、体や感情にもバランスよく働きかけるのが重要です」と語った。
説明を受けた林市長は「今の若い人たちに足りないのは相手の立場に立って考えること。論理的に考えることはできるが、感情が機能していない。胸で感じることが弱い。(シュタイナー教育では)感情や手をフル回転させている。これ(エポックノート)自体が素晴らしい。先生は人知を使ったあらゆるものを要求されますね」などと感想を述べた。
▽廃校利用には法の壁
懇談会では学園が今抱える課題についても説明した。保護者で学籍の会の水野明徳さんが横浜市在住の6名が地元の各学校の判断で学籍を認められていない現状を指摘。中学卒業時に学籍が無いと高校受験資格が得られず、国家試験である中学校卒業程度認定試験受験のため最低1年間高校浪人をしなければならないことや、仮に学籍が認められ受験資格を得られても現状では受験に必要な内申点が得られず、合格が難しいというハンデの解消に理解を求めた。
これについて市長は「学籍(への対応が学校によって異なっている)のことは初めてうかがった。担当に話をして、また話し合いをさせていただくようにします」と述べ、事務局に指示し、市として協議に応じることを約束した。
また、運営委員の千原さんからは、学校法人格を取らなければ廃校利用も難しい、また校舎が無いと学校法人化もままならないという法制上の矛盾を説明。
「ある程度の実績や財政的な基盤が整っているフリースクールでも廃校舎を利用できる仕組みづくなど支援」を提案した。しかし、廃校利用について市長は「長い間民間で仕事をしてきて、市長になって一番感じるのは法律の壁。大きく何かを変えていかないと立ち行かない」と述べるにとどめた。
市の担当者は「懇談会は陳情の場ではないが、公募に選ばれたのも何かの縁」と話す。少なくとも市長は横浜シュタイナー学園を認知し、教育の実践内容に一定の理解を示した。この「縁」を大事に課題解決につなげたい。(了)