幼児期の子どもたちの成長過程と環境について

シュタイナー教育では、子どもが意志、感情、思考において調和のとれた人間として成長することを目的とし、そのために、人間の心身の発達段階に応じた独自の教育を行っています。

意志の教育(体の基礎を作る)時期である、0~7歳の子どもの発育を考えた時に求められる、子どもたちの環境とはどのようなものでしょうか。

大人たちが覆いをつくる

 誕生前の子どもたちは母親の子宮という覆いの中で、母親からの栄養を得て体を形成し誕生までの期間を過ごします。 誕生後の子どもたちの体はまだ完全ではなく、生まれ出た世界の環境を全身で感じ、それが栄養となって体を少しずつ成長させていきます。
現代社会に溢れている人工的で強い光、音、感触を持つものは、体を十分に発達させた大人たちには当たり前のものであっても、小さな子どもたちにとっては、とても刺激が強いものです。そこで、大人たちが意識的に覆いをつくり、子どもたちの身の回りの環境を整えてあげることが、幼児期の子どもたちの成長にとってとても大切になります。

 幼児期の子どもたちの環境には、場所や物だけではなく身近にいる大人たちも含まれます。子どもたちは、大人たちの声や温もり、表情や目線、さらに日常の振る舞いさえも、全身で吸収し、模倣していきます。成長の過程で、子どもたちが周りの人々や社会に対し信頼や愛情を持って関わっていく礎となるのは、自分に関心を抱き、自らが発する反応や欲求に、愛情を持って反応してくれる大人の存在だと言えます。

 現代社会の大人たちは、あらゆる情報をすぐに受け取ることができる身近なデジタルツールが手放せなくなっています。そのため、意識がそちらに向いてしまう時間が増えています。しかし、大人たちが全身の感覚を子どもたちに向け、愛情を持って向き合う時間を優先することが、この時期の子どもたちの栄養となることを忘れてはなりません。

 幼児期では、こうした栄養を吸収し、体の形成の基礎をしっかりと育みます。それはのちに、自らが知的なことへの興味や判断する力を目覚めさせていくための土台作りとなります。 自ら目覚めていく力を育むには、早い段階から知的すぎる情報を与えることや子どもたちに大人と同じような思考や判断力を求めることをやめ、子どもたちが安心して成長していくための環境をつくることが大切です。
 

子どもが子どもらしくいるために大切にしたいこと

 

スキンシップを大切に

子どもが小さい頃はなるべく、子どもとスキンシップをとってあげたいものです。乳児なら、だっこ、おんぶ、添い寝、話しかけ等でしょう。また、言葉がわからない時期でも、目を見つめて語りかける親の気持ちは伝わります。一緒に居る時間がなかなかとれない時に、子どもは甘えてくるはずです。できるだけ、身体に触れて、甘えに応えてあげること、忙しい現代社会に生きる大人には大変かと思いますが、子どもはそれだけで満足するものではないでしょうか。

 

生活のリズムを作る

早寝早起き、食事の時間、これをきちんと守ることで、生活にリズムができます。しっかり遊んで、しっかり食べて、しっかり寝る。シンプルですが、この時期の子ども達が必要なのは知識ではなく、このようなリズムなのです。共働き世帯が多く、大人も余裕がない現代社会ですが、子どもに相応しい生活を実践することで、親子ともに健康になるでしょう。

自然に親しむ

人工的で刺激の強い光、音、感触を持つ遊具を沢山与えるよりも、自然な素材で素朴なものに触れさせてあげましょう。子どもたちは自由な発想で遊ぶことができます。
できるだけ子ども時代は自然に目を向けさせてあげましょう。自然には子どもたちの興味をひく、沢山の事象があります。花、葉っぱ、木の実、昆虫、小鳥たち等、四季の巡りの中で日々変化する自然の神秘や美しさに気づけば、子ども達は、自然そのものに大いなる興味をいだいて、まさに地に足がつく生活になるのではないでしょうか。

 

子育てにスマホはいらない

小さな子どもは、親が大好きです。ですから、親が一緒にいて、見守ってくれることに、大きな安心感を持ちます。よく「親バカ」と言いますが、子どもに対して、全身全霊で愛情を注げるのは、親しかいないのです、だからこそ、子どもと一緒に過ごす場面では、できる限り、スマホを触らないようにしてほしいのです。
子どもは、親がスマホを使えば、自分に向くはずの愛情がスマホに奪われていると思うのではないでしょうか。

情報を制限してあげましょう

子どもの健やかな成長にとってもっとも大切なのは、身体と五感を思いっきり使って日々発見、感動することです。小さな子どもの実生活にそぐわない過剰な情報は、不要どころか、子どもの成長を妨げる弊害になることが科学的にも立証されています。
早期教育や学習教材としてのITツールを含めた学習機会への誘惑が拡大しています。子どもたちが頭でっかちならないように、情報を制限してあげましょう。制限したい事柄を例として挙げれば、早期学習、スクリーンメディア(テレビ、スマホ含む)の体験、年齢相応ではない読書(活字を読むこと)等です。また、メディアを見せないまでも、大人の話題(政治、経済、世の中を揺るがす事件や事故の情報自体)に子どもを巻き込むことは同じ理由で戒めたいものです。

関連外部サイト
 
 ・日本シュタイナー幼児教育協会:
  シュタイナー幼児教育について https://jaswece.org/education/
  シュタイナー幼児教育とは https://jaswece.org/education/introduction/
  
 ・GIGAスクールの時代に選択の自由を!
  『デジタル時代の子育て-年齢に応じたスマホ・パソコンとのつきあい方』
   https://waldorf.jp/100th/growing01/

がくえんにっし -日々の活動を綴ったブログ-